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三中信宏『読書とは何か』

三中信宏『読書とは何か』

  • 三中信宏『読書とは何か 知を捕らえる15の技術』
  • 発行年月日:2022年1月30日
  • 発行元:河出書房新社
  • シリーズ:河出新書046

プロローグ 世界は本に満ち溢れている #

  • 本書で焦点となる読書は、単に文字を読み取るだけのものではなく、また、素早く楽に読んですぐに何かに役立てるといったものでもない。本書が志向しているのは、そうした「読書効率主義」ではなく、その本の著者の主張や著者が依拠している知識体系を理解しようと悪戦苦闘する読書、読みながら推理・推論を重ねて自分の頭で考えをめぐらしていく読書とされる。
  • (本文で比喩されている)流動食としての受動的な読書ではなく、みずから力をふるって、かみ砕き、すりつぶし、飲み込んでいく、きわめて能動的な読書と言える。
  • ノンフィクションやどちらかといえば専門的知識を扱う本が対象になっている気がしないでもない。小説などにも当てはまるとは思うが、それらの読書にはまた異なる意味合いもあるような。
  • 例(?)として引かれている2つの漢詩とその訳・解釈がとても魅力的。何か楽しい境地に誘われるような気持ちになる。自分は日頃ほとんどお酒を飲まないのだが、引用されている靑木正兒の『中華飲酒詩選』は読んでみたいと思った。

第1章 知のノードとネットワーク——読書は探検だ #

  • 本章では、筆者がこれまで実践してきた読書法について説明される。そのさい、読書は一種の「狩り」であることが強調されている。本を探して手にすること、読み進めること、読了後にまとめること、いずれも「本という文字空間」(23)のなかで「狩り」をすることに例えられるという。

1.2 文字空間とその可視化——インフォグラフィックスの視点から #

  • まず、本の「文字空間」は固有の「地形」をもち独自の「風景」を構築しているのだが、その全体を見渡すことはふつう不可能。それを可能にした試みとして、現代インフォグラフィックスの具体例が挙げられているが、一般の読書にとっても、いま読んでいる部分が全体でどういう位置づけなのかに注意することは有益。ただし、一般の読書では、インフォグラフィックスで可視化されるような一種の「チャート」も「マップ」も持たないで、したがって「丸腰」で「文字空間」に足を踏み入れ歩んでいくことになるとされる。
  • 「文字空間」の「地形」というか全体の「構造」ないし「つくり」(?)に注意することは、とても重要な気がする。読書するとき、私たちはおそらく無意識のうちに、そのことに注意を払っていると思うが、もっと自覚的にやった方がよいのかもしれない。
  • インフォグラフィックスの例はなかなかすごい。でも、書かれている通り、一般の読書で取り入れられることではない。というか、「文字空間」なるものをはっきり見せてくれる試みと理解するのがよいのだろう。

# 三中信宏

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